**探究/「条件を満たす点の集合」としての軌跡
*** 定義 - ある点Pを動かせるとき,注目していることが「成立する」場合と「成立しない」場合があるとする。 - 「どんなときに成り立つのだろう」ということが気になる。 - それを明らかにするための手段として,「ここでは成立する」という場所を明確にしたい。 - 「成立する場所」を見つけては記録していき,その集合から探究を進めていくときに使えるのが,「条件を満たす点の集合」である。 ***GCの機能との関わり -まず,Pの軌跡の色を設定しておく -pを動かし,注目していることが成立しているとき,「記録」ボタンを押す。 -それを繰り返していくことで,点が集合として増えていく。 -それが,「記録」だが,誤差などを含むこともありうるので,精確かどうかはわからない。 -画面全体を調べているともかぎらないし,そもそもGCの中にあるのは平面全体のほんの一部分だ。 -それを手がかりに推論し,探究を進めていくことが大切だ。 ***高校数学での「軌跡」との関わり -高校数学での「軌跡」の定義は,「与えられた条件を満たす点全体の集合が表す図形」になっている。 -ある意味で,「高校での軌跡の定義」に該当するものが,ここでの軌跡(locus)になる。 -別の言い方をすれば,「点が動いた跡としての軌跡(trace)」は,動的幾何ソフトでの現象としては,primitiveなものになるけれども,高校数学での「軌跡」そのものを表現しているのではなく,高校数学での「軌跡として扱われるものの一つ」ということができる。 -現実の高校数学では,そこで想定している「条件」は,数式で処理されるもの,あるいはその後の数式処理が可能な対象に制限されている。 ***基本的な量にかかわる「条件」 -点と点との距離 (定点から距離が一定の集合は,円(周)である) --他にも,幾何的対象と幾何的対象の距離をもとにつくられる条件は多様 -角 --2定点と動点がなす角が一定の点の集合は,円(の一部)になる(円周角の定理の逆) -面積 --等積変形(定点BCに対して,△ABC=△PBCとなる点Pの集合は,BCに平行でAを通る直線) ***f(x,y)=0, また,f(P)=0 という条件を満たす領域 -「条件」を式で表現したとき,それはPに依存する式f(P)と表現でき,それが一定の値kをとるなら,それを変形し,f(P)-kという新しい数式を考えれば,一般ニ,f(p)=0という数式を満たすことと解釈できる。 -また,P(x,y)として,x,yで表現すると,f(x,y)=0という,陰関数ということができる。 ***GCの機能との関わり(2) -エキスパートモードにおいては,「いまうごしている点をPとしたら,その点がかかわっていて,「-」を含む式に対して,「測定」メニューの中でボタンを表示する。 -そして,そのボタンが押されたら,画面内部全体に関して探索し,f(P)>0,f(P)=0, f(P)<0 のいずれになるかを描画する機能がある。 -この機能を使うことで,「その画面の中に限定される」けれども,その条件を満たす集合を領域の境界として知ることができる。 ****備考 -GCに「そのような機能」があるとしても,生徒がその機能を使うのが適切かどうかは「場合による」 -つまり,点をプロットする作業そのものは時間がかかり,非効率的な作業だが,「ここならどうなるかを予想」したり,「実際に実験結果を観察」したり,また,「どういう場所をどういう順序で調べていくかの作戦をたてる」とか,まわりのグループとの違いを考えるとか,部分的に得られた結果から推定するなどの活動が「意味をもつ」ならば,「ボタンを押したら自動的に描画する」という機能は,そういう機会を奪ってしまうといえるからだ。 -しかし,たとえば,問題の条件をかえた自作問題について考える様な場合,結果がどうなるかがわからない。そのとき,「探究する価値がない問題」に取り組んでいることもありうる。短時間で「取り組む価値があるかどうかを検討する」というような場合には,この機能はとても役に立つ。 -そのような意味で,「授業の中でどういう活動をさせたいか」によって,教師目線で活動を選択し,それに対応する機能を選択することは重要だ。 ***注目したい条件は,「量」だけではない。 -たとえば,図形の中で,ある形が長方形になる場合に注目するなど,図形の性質に注目することも多い。 -実は,その性質は,数式に帰着することができることも多いので,広い意味では「f(P)=0としての軌跡」にかかわるのだが,授業等での課題を考える上では,数式とか,量のみに限定して考えない方がいい。 *** いろいろな問題とその発展 |@01_121-distance.htm,距離|@01_121-area.htm,面積|@01_121-angle.htm,角|